事案の概要
未成年の子どもを持つ夫婦が離婚をする際には、父・母のどちらか一方を親権者と定めなければなりません。
財産上の争いであれば、ある程度のところで譲歩をして合意をするということも可能かもしれませんが、親権が争いになる場合、合意ができないケースも少なくありません。
親権とは、親が未成年の子を健全な社会人にするために監護教育する権利・義務をいいます。
その内容としては、未成年の子の財産を管理したり、子の財産上の法律行為を代理したり同意したりする権利・義務(財産管理権)と
子の居住場所を指定したり、子に懲戒・しつけをしたり、子が職業を営むのを許可したりする身上監護権があります。
親権を定めるにあたっては、以下の事情が総合的に考慮され、子の利益、福祉を基準として判断されます。
- 父母のの監護に対する意欲と能力
- 父母のの健康状態
- 父母のの経済状態
- 父母の居住・教育環境
- 従前の監護状況
- 子に対する愛情の程度
- 親族などの援助の可能性
- 子の年齢・性別・兄弟姉妹の関係
- 子の心身の発育状況
- 従来の環境への適応状況
- 環境の変化への適応性
- 子の意向
また、子の利益に合致するかについては、上記のほか以下の事情が言われることがあります。
1 面会交流の許容性
子の成長過程において、別居親とも良好な関係を築けることが子の福祉から重要であることから、相手方との面会交流を認めることができるか、子に相手方の存在を肯定的に伝えることができるかが、親権者としての適格性の判断材料となります。
2 兄弟姉妹の不分離
兄弟姉妹が同一の親の下で生活を送ることは、一般的に、その健全な成長に資するものといえます。
ただ、兄弟を分離することが、子それぞれの最善の利益にかなう場合もあり、兄弟不分離は、子の最善の利益を判断する一要素にすぎないとも言われます。
3 監護開始の違法性
違法な連れ去り行為によって有利な地位を獲得することを許すことは、違法行為を助長する結果となります。
そこで、監護開始の違法性は、親権者としての適格性に疑義を生じさせる事情となるとされます。
4 母性優先
かつては、乳幼児については、母親を優先すべきとする考え方が定着していたこともありましたが、近時は、性別を問わず「主たる監護者」による監護継続の必要性を重視するのが主流になっています
親権を獲得するためには、上記のような事情を主張立証していくいことが大切です。
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