事案の概要
たとえば、夫が不貞行為をしたがために、夫婦関係が悪化したにもかかわらず、その原因を作った夫の側から離婚を求めるということがあります。
一般に、これを有責配偶者からの離婚請求といいます。
当初、判例では、「勝手に愛人をもった夫からの離婚請求が認められるならば、妻は踏んだり蹴ったりである」とし、有責配偶者からの離婚請求を否定していました(最判昭和27年2月19日)。
ところが、その後、最高裁は、
- 夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及んでいること
- 未成熟子が存在しないこと
- 相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態におかれる等、離婚請求を認容することが著しく正義に反するといえるような特段の事情が認められないこと
といった要素を考慮して、有責配偶者からの離婚請求を認めました(最判昭和62年9月2日)。
どの程度の別居期間があれば、上記判例の相当の長期間の別居といえるか、ですが、
別居期間約8年で離婚が認められたケース(最判平成2年11月8日)や別居期間約6年で離婚が認められたケース(東京高判平成14年6月26日)がある一方で、
別居期間8年で離婚が否定されたケース(最判平成元年3月28日)もあり、
この程度の別居期間が、離婚が認められるかどうかの分かれ目といえるかもしれません。
なお、上記の昭和62年の判例では、未成熟子が存在しないこと、を有責配偶者からの離婚請求の要件としていましたが、その後、未成熟子がいる場合(高校2年生)にもかかわらず、有責配偶者からの離婚請求を認める判例も出ており(最判平成6年2月8日)、未成熟子の不存在の要件は、必ずしも必要ではないようにも見受けられます。
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