事案の概要
地震で、借りているアパートの部屋の壁に大きなひびが入りました。
雨が降ると、部屋に雨が大量に入ってくる状態です。
大家さんに対して、賃料は全額支払わなければならないでしょうか。
また、部屋の壁は修理してもらえるでしょうか。
今回の事案とは異なりますが、地震でアパートが倒壊したような場合には、建物が滅失したといえるので、当然にアパートの賃貸借契約は終了します(民法第616条の2)。
今回の事案では、アパートの壁にひびが入ったものの、建物(部屋)が滅失したとはいえず、建物(部屋)の賃貸借契約は、当然には終了しません。
そのため、部屋を借りている賃借人には、賃料支払い義務が残ります。
もっとも、部屋の一部について使用収益をすることができなくなった場合には、その使用収益できなくなった割合に応じて賃料は減額されます(民法第611条第1項)。
今回の事案では、アパートの壁にひびが入り、雨が大量に入ってくる状態ですので、アパートの部屋を使用することができなくなっているといえます。
よって、賃料は減額され、大家さんには賃料全額は支払わなくてよいこととなります。
具体的に、どのくらい減額されるのかは、部屋を使用できない割合によることとなり、実際には、大家さんとの話し合いするとなることと思われます。
次に部屋の壁の修理についてです。
大家さんは、建物の使用収益に必要な修繕をする義務を負います(民法第606条第1項本文)。
よって、部屋を借りている賃借人は、大家さんに部屋の壁を修繕してもらうことができます。
もっとも、修繕が不可能な場合には、大家さんは修繕をする義務を負わないものとされており、例えば、アパートの価値に対して、あまりにも高額な修繕費がかかるといったような場合であれば、経済的に修繕が不可能とされ、大家さんは修繕義務を免れるといったことも考えられます。
ただ、そうでない場合には、大屋さんは修繕をしなければなりません。
その他、例えば契約書に、修繕は賃借人が行うとったことが明記されていたような場合にも、部屋の壁は修繕してもらえるでしょうか。
これについては、一般に、大修繕の場合は、契約書をもってしても賃借人に修繕義務を負わせられないと考えられています。
今回の場合には、壁という部屋の主要な構成物に大きなひびが入っており、修繕に多額の費用がかかるような場合には、大修繕と考えられるため、大家さんは修繕義務を免れられないと思われます。
お困りの際は、お気軽にご相談ください。